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ニューズレター第3号(January 20, 1996)
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変貌するRILM:ニューヨーク・センターの新方針
New Policies of RILM
Special Thanks: Adam O'Connor(RILM 前編集長)
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『国際音楽文献要旨目録 RILM Abstracts』は、ニューヨークの国際センターを中心に、編集が行われている。この国際センターの編集方針が、この数年間に、大きく変わった。
かつて国際センターは、各国の委員会に、「選りすぐり」の文献を選定して送付するよう求めていた。ところが今は「もっとたくさん」欧文要旨を要請するように、変わってきている。この要請に応えて、日本の音楽文献目録委員会も健闘している。
ここ数年来、ニューヨークの国際センターでは、何が、どのように変わったのだろうか? 今回、RILMの前編集長*であるアダム・オコナー氏に、インターネット上でインタビューをおこなった。以下に、オコナー氏からのメッセージをまとめてみたい。
[*オコナー氏は、このインタビューをおこなった時点では、RILMの編集長の任にあったが、その後、体調を崩し編集長の座を退いている]
【ここ数年来の大改革】
「数年前、私がRILMの編集長になったとき、いくつかの改革に着手しました。それはかなり大がかりな改革でしたが、それをしないことには先に進むことができなかったのです。
最初に手がけた改革は、編集スタッフを増員・強化し、製作のスピードをあげることでした。そしてその次に取り組んだのが、コンピュータ・システムの変更です。それまでRILMでは、1967年以来の古いコンピュータ・システムを使っていました。しかもこのシステムは必ずしも出来のよいものではなく、また、それをきちんと扱える人材にも事欠いていました。そこで、新しくコンピュータ・システムを設計しなおしたのです。
次にしたことは、収録文献の範囲を広げることでした。国によっては、RILM委員会が一応組織されていても、それがまったく活動していない国がありました。委員の職が名誉職化してしまい、実働不可能な委員会をもつ国があったのです。そこで、そうした国の委員会に積極的に働きかけ、委員会の性格を実働型のものに変えてもらいました。いっぽう、実働力をもった国(ドイツやアメリカ合衆国)でも、従来あまり熱心にデータが拾われてこなかった分野がありました。たとえば、学際的な分野や、音響学、心理学、民族音楽学などの分野です。そこで、そうした分野の偏りがおこらないように、改善してもらいました。
そして今年1995年ですが(訳注:このインタビューは1995年におこなわれた)、今年の目標は『各国の委員会とのコミュニケーションをより密にすること』と、『各国から送られてくる要旨のデータ件数を増やし、しかも内容の質を高めること』です。この後者の点に関しては、それぞれの国の委員会の事情もあるので、むずかしい問題だということはわかっています。でも、イタリアの委員会のGabriele
Rossiさんのように、この点にかんして、すばらしい働きをしてくれる若い委員が新しくメンバーに加わってくれているところもあります。
結局、RILMでは、次の3つのレベルの資料の情報を、いずれも必要としているのです:(1)従来どおり、学術的に一定の水準をもった文献資料。(2)これまであまり注目されてこなかった分野に関する、新しい研究成果の報告。たとえば楽器の修復活動や、音楽療法活動に関する報告資料。(3)たとえ学問的な論文ではなくとも、資料として興味のあるもの。たとえば、ポップスや民間伝承に関する資料など」。
【NYオフィスの台所事情】
「1967年にRILMが始まり、各国に委員会が作られました。しかしその運営方法は各国まちまちでした。たとえば、アメリカ合衆国では、RILMの委員会はまったくの手弁当で運営されてきました。ドイツの場合は事情が違って、何がしかの報酬をもらってRILMの仕事をする人もいましたが。
1994年に、オタワでIAMLの国際会議があったとき、私たちはひとつの提案をしました。それは、各国の委員会を金銭的に援助できるようにするため、RILMの購読料を値上げする、という案です。しかし、この案は否決されてしまいました。値上げした分を各国支部に分配しようと考えていたのですが、だめでした。
ただ、今後もまた、なんらかの形で各国の委員会に金銭的援助ができるように、可能性を検討してゆきたいと思っています。たとえば、各国の委員会が、新しい購読予約者を紹介してくれた場合や、あるいは広告掲載を斡旋してくれた場合には、その紹介料を支払ってゆくつもりです。
ニューヨークの国際センターも、実はどこからも金銭的援助を受けていません。ニューヨーク市立大学(CUNY)からも援助はありませんし、IAMLからも、IMSからも、合衆国政府からも、どこからも援助を受けていないのです。購読料収入だけでなんとか存続している、というのが現状です」。
【今後にむけて:RILMの真の国際化】
「最近はフロッピや電子メールでの原稿も受け付けています。また、タイプライターで印字されていれば、スキャナで読みとることができるようになりましたので、わざわざ各国の委員会で清書したり入力しなおしたりしてもらう必要はなくなりました。
あとは、RILMの『真の国際化』を願うばかりです。なにかしらの音楽学的な活動がおこなわれている国には、かならずRILMの委員会が置かれるようになってほしいと願っています。
そして、ここ数年間のうちに、年間20,000件くらいの文献要旨を収載できるようになりたいと考えています。もちろん、そうなれば、私たちの仕事がますます増えるでしょうし、経済的にも苦しい状態になることは覚悟の上です。しかし、私たちは、RILMの活動がますます活性化し、ひいては音楽文化の向上のために働くことができれば、それで本望だと思っているのです。
もしも日本のみなさんも同じような考えをもっていただくことができ、今後さらに多くの文献情報を送っていただけるようになれば、私たちもとても嬉しく思います。かつて、数年前には、各国の委員会から送っていただいた資料情報を国際センターが採用しない、などということが実際にありました。しかし今は、そのようなことは決しておこりません。どうか、これまでにも増して、たくさんの情報を送ってください。
RILM全体のなかで、日本の存在がもっともっと大きなものになってくれることを期待しています。そのためにお力になれることがあれば、できるだけの努力を払うつもりでいます」。
【もっとたくさんの要旨原稿を】
「ニューヨークのオフィスは、10年前とくらべて、大きく変わりました。今まで以上にエネルギッシュで、野心的な活動が展開されるようになってきています。
たとえば、1986年の巻に収録した要旨の数は、全部で7,000件でした。それが、1992年の巻では、15,000件の要旨を掲載するまでになりました。データの件数は、今後もさらに増やしてゆく方針です。もちろん、意味のない項目は掲載したくありません。でも、なにかしら意味のあるものは、遺漏なく、すべて掲載してゆきたいのです。
この数年間、『もっともっと』要旨を送ってくださいと声を大にして言い続けてきました。ところが、かつて『あまり送りすぎないように』と各国の委員会に言っていた時代があり、そのイメージがいまだに払拭できないのが残念です。
過去3年間、日本から送られてくる要旨の件数も24→51→98と増えました。とても感謝しています」。
(訳+編:秋岡 陽)
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REPORT BY TREASURER 会計報告 会計:藤堂雍子
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【予算準備案】
新しい支部体制の中で、1995年度予算準備案が、役員会(1995年7月7日)で認められました。これは1996年度に向けての試運転の意味を持つため、詳細は、決算の形でご報告することにします。収入の項目は会費収入と、活動基金からなり、支出の項目は、本部への会費送付、アウトリーチへの1995年度デンマーク会議参加支援、RILM、IMC各委員会への供託金、事務局長会議派遣補助費、会議費、再刊された支部ニューズレター作成費、通信費・消耗品費などの諸経費と、借入返済(今後2-4年)です。当面は、以上の項目を置きながら、年度内に実際の活動に要する金額を注意深く見守り、次年度から正式に予算案を作案し、総会でのご承認をいただくよう準備するのが、1995年度の課題です。
【活動基金募集締切りを延期】
1994年度までの会費未回収個人会員宛にお願いした新規活動基金は、1995年12月31日現在、281,000円が集まりました。これは、個人未回収分の43.4%にあたります。(自己未納分を越えてご協力を下さった会員に感謝申し上げます!)通信費や、ニューズレター制作費を工面しながらの半年、さらにご協力賜れば、事務局も安定した運営や活動に入ることができます。新規活動基金の受付を延長しましたので、未だ、お送りいただいていない個人会員で、趣旨にご賛同いただける方、よろしくお願いいたします。
【本部の団体会費値上げ決定】
デンマーク大会で、1997年度より、団体会費値上げ10%が決定しました。安定した財政への見通しと、アウトリーチ援助を支出項目に組み込んだことに拠ります。日本支部での徴収額は、1996年度総会でお諮りします(徴収は1996年秋からです)。
【1996年度会費について】
毎年11月に次年度の会費請求をいたします。払込みは、年末までにお願いいたしました。若干の方が未納です。会費納入にあわせて機関誌『Fontes』の送付名簿を整理いたします。ご注意ください!
【村井範子氏へ返済を開始】
1994年度までの会費5年分立替分について、金額の確証のための再調査が済み、年末に第1次返済をいたしました。なお、村井範子氏のご好意により、全返済分の約半額にあたる100万円を、新規活動基金として、1995、1996年度に分けてご寄付いただけることになりましたので、返済金と相殺いたしました。詳しくは総会でご報告いたします。(1995年1月5日記)
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アウトリーチ・レポート:プノンペンから支援要請
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【プノンペンで楽譜が求められています】
IAML本部のアウトリーチ活動の一環として、次のような支援要請の手紙のコピーが、日本支部にもとどけられました。プノンペンの王立芸術大学に、ボランティアの音楽教師として派遣されたイギリス人女性からの手紙です。現地では今、楽譜が不足しています。余剰の楽譜をお持ちの方からの寄贈がよびかけられています。
特に必要とされている楽譜は、木管楽器のための楽譜、オーケストラ音楽(中級程度)のパート譜、オーケストラ音楽のスコア、弦楽器のための楽譜、室内楽曲のパート譜です。寄贈可能な楽譜をお持ちの個人あるいは機関は、IAML事務局まで、まずご連絡ください。事務局より先方に連絡をし、その楽譜が必要であるかどうか確認をとります。なお、寄贈者から事務局までの国内送料については、原則としてご負担いただくこといなりますので、あらかじめご了承ください。
以下に支援要請の手紙の原文を掲載します。
I have recently returned to the
Together with two othe volunteer teachers from the
Our most urgent needs at the moment are for sheet music for wind instruments,
and orchestral music of an intermediate standard; after this, miniature
scores of orchestral music, sheet music for string instruments, and sets
of chamber music. We have not yet managed to arrange listening facilities
(there is no parmanent power supply) but cassette recordings are future
need. For the long term, texts books in music history, theory and analysis
will be a need, but as yet only a few of the Cambodian staff and none of
the students have the English to use such material. English is however
the language which students are mostly learning now. (Naomi Sharp)
【アウトリーチとは】
アウトリーチ・プロジェクトの趣旨および活動状況については、機関誌『Fontes』の第42巻第2号を参照してください。また、同誌の第41巻の144-150ページにもレポートがあります。
現在は、とくにイギリス支部が中心となり、アルバニアなどに、積極的な働きかけをしています。また、1995年のデンマーク会議には、アウトリーチ活動の一環として、インドやタンザニアから参加者が招待されました。さらに次の各国には、IAMLが費用を負担して、機関誌の寄贈送付を行っています:アルバニア、アルゼンチン、インド、インドネシア、ケニヤ、メキシコ、モルドヴァ、タンザニア、タイ。
アウトリーチの活動は、一般会員からの寄付金と、IAML本部からの援助金によって維持されます。1996年度は、IAMLの会費収入の2.5%が、アウトリーチ・プロジェクトのために振り分けられることになっています。
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ペルージャ会議で鶴園氏が発表
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1996年のIAML年次大会はイタリアのペルージャで開催されるが、今回の音楽教育機関部会のテーマは「音楽学校図書館と美術」。音楽教育図書館では、音楽資料が教材の中心になるが、専門教育課程にある学生にとって、技術以外の多くを他の芸術から学ぶことは重要で、そうした配慮も図書館に期待される。部会の座長であるM.ランスラン氏の要請を受けて、鶴園紫磯子氏(桐朋学園大学ピアノ科、室内楽講座非常勤講師、ジャポネズリー研究学会会員、IAML新会員)が、フランス音楽にもたらした日本の影響を、音楽と絵画の側面からアプローチすることになった。鶴園氏は、高階秀爾、芳賀徹氏らとジャポニズム研究を続けており、国内の美術館で催される公開講座などで、講演を重ね、とりわけ音楽を中心に、視覚から聴覚に広げた主題を掘り下げている。
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会員異動
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(1)住所変更
井上公子
(2)新会員
愛知県立芸術大学音楽学部音楽学研究室(井上さつき・楢崎洋子)、河野純子、草野妙子、竹内道敬、中島朋子、樋口隆一、エヴァルト・ヘンゼラー、藤根ちか子、米田かおり
住所の変更がありましたら、日本支部の事務局まで、ご連絡ください。本部からの郵便物の宛名に誤植がある場合なども、日本支部の事務局あてご一報ください。日本支部事務局が窓口となって、本部へ連絡します。
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事務局より
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■会費納入はおすみですか?
IAMLの会計年度は1月1日にはじまり、12月31日でおわります。昨年末、1996年1月1日から1996年12月31日までの会費(1996年度分)を請求させていただきました。未納の方は、至急ご送金ください。なお、次の方々は、すでに1996年度分を納入済みですので、今回は会費の請求をしておりません:加藤信哉、金澤正剛、河野純子、竹内道敬、樋口隆一、エヴァルト・ヘンゼラー。
■本部の名簿改訂中:e-mailやfax番号も
本部では、定期的に、世界中のすべての会員の住所を掲載した名簿を発行してきました。前回は1992年に発行しています。現在、この名簿が改訂の時期を迎えています。今回の改訂で、名簿が大きく変わります。というのも、次の情報を掲載することになったからです:(1)電話番号、(2)ファックス番号、(3)E-mail番号。
団体会員の場合は、上記情報を、「もれなく掲載したい」というのが本部の方針です。いっぽう、個人会員の場合は、プライヴァシー保護のため、上記情報を掲載するかどうかは、本人の選択にまかされます。つきましては、上記の情報を、名簿に掲載することをご承諾いただけるかたは、日本支部事務局あてお知らせください。会費納入時にすでにお知らせいただい方は、あたらめてご連絡いただく必要はありません。
■事務局への連絡は郵便かFAXで
IAMLは、日本近代音楽館のご好意により、同館に事務局の住所をおかせていただいております。しかし、来年度も、日本近代音楽館職員のなかに、IAMLの事務局スタッフがおりません。館員の方のご好意で、郵便物等を転送していただいているのが現状です。したがって、事務局への連絡は、電話を避け、書面にてお送りいただけますようお願いいたします。
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PUBLICATIONS RECEIVED
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*Israel Music Institute News, 1995/2. (Israel
Music Information Centreより)
(以上)