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ニューズレター第6号(February 20, 1997)
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IAML Japanese Branch had its
study-meeting on
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IAML日本支部例会に参加して 中島朋子
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去る12月14日、IAML日本支部の例会が開催された。
前半は「東京大学附属図書館における電子図書館化」と題し、東京大学附属図書館システム管理掛長の加藤信哉氏による、東京大学附属図書館における電子情報サービスの紹介と発表、後半は藤堂雍子氏の進行で、音楽関連のWWWホーム・ページを探索。前半・後半ともに、実際にコンピュータを使いながらデモンストレーションが行われた。
まず前半は、以下の3つの項目に分けて発表がなされた。
1.電子図書館とは
2.東京大学附属図書館における電子情報サービス
3.東京大学附属図書館における所蔵資料の電子化
これらの項目のうち、参加者の関心がとくに集まったのは、3つ目の、資料の電子化に関する発表であった。ここではデモンストレーションを行い、電子化された貴重資料を見ながら説明を受けることができた。また「東京大学附属図書館における電子情報サービス」でもデモンストレーションを行いながら、現在行われているサービスが紹介された。
後半は、実際に音楽図書館や音楽書誌関連のホーム・ページにアクセス。今回アクセスした10あまりのホーム・ページのうちアメリカ音楽学会 American
Musicological Society のものに対して、とくに参加者の評価が高かったように見受けられた。時間が限られているので、各ホーム・ページの細部までは見てゆかなかったが、時間内にできるだけ多くのホーム・ページの概要を知ることができた。
今回は前半・後半ともに約1時間、計約2時間のプログラムで、内容も盛りだくさんの例会となった。また、会員以外の方の参加もあった。コンピュータによる情報収集・検索は、最近とくに注目されている分野のひとつであるので、参加者の関心を集めていた。(フェリス女学院大学図書館)
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インターネットと音楽資料情報 秋岡 陽
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■音楽学研究とインターネット
昨年、ペルージャでのIAMLの国際会議のときのこと。恒例の Farewell Party で、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・ロバーツ John
Roberts と隣席になった。当日は、小生にとって苦手(?)な着席式パーティー。3時間以上に及ぶ同席中、同じ相手(しかもオジサン)と会話を絶やさないようにするというのは、正直言って大変。しかし、あることないことを話し続けるうちに、ヘンデルの専門家として知られる彼が、大学では「Music
Bibliography」の講義を担当していることがわかった。実は小生も、大学で同じ内容の授業を担当している。やっと「とりつく島」を発見。それからはもう話題に困ることはなかった。「最近は、教える内容が毎年めまぐるしく変わるので、授業の準備が大変!」と、盛り上がった。
この2-3年、妙に変化がめまぐるしい。数年来、小生は、大学で音楽学の研究法入門のクラスを担当してきた。そうしたなか、「インターネット」という言葉を頻繁に聞くようになったのは2年くらい前だろうか。「どうせ昔のハム無線通信少年の遊びのようなもの」「きっと一過性の子供の遊び……」とたかをくくっていたのが1年半前。ところが昨年は、ついに小生の勤務する大学でも学内LANが稼働をはじめ、学生1人1人がIDをもらって、インターネットを利用するようになった。そうなってくると、音楽学研究法入門のクラスでもインターネットをとりあげないわけにはゆかない。確かに一過性のものかもしれないが、しばらくはその流れに身をまかせてみようと思うに至る。遅まきながら小生も、4月の新学期から、いよいよ授業でインターネットをとりあげることになった。
■オズの魔法使い
先日届いたIAMLの機関誌のページをめくっていて、「Down the Yellow Brick Road」(『Fontes Artis Musicae』43/3
[1976], pp. 315-324)という興味深い記事を見つけた。ここで言う「Yellow Brick Road」は、『オズの魔法使い』のなかの「黄色い煉瓦敷きの道」のこと。論文の筆者Sherry
L. Vellucci は、インターネットをこの「黄色い煉瓦敷きの道」にたとえている。
その心は? ブリキ人間や、案山子や、ライオンまで巻き添えにして、大騒ぎして進んで行っても、行き着く先にあるにはただの「幻 illusion」かもしれない、ということ。しかし全部が全部「幻」なわけではない。そこで、音楽文献資料の探索にさいして「いつインターネットを使うべきか」「いつインターネットを使うべきでないか」、その見極めが大切になる。
■Bibliography のツールとしてのインターネット
上掲の論文の筆者 Vellucci は、大学で「Music Bibliography」を学ぶことの本来の目的を明確にすることから論議を始める。新しいメディアに立ち向かおうとするとき、きわめて大切な姿勢だ。
「Music Bibliography」の学習到達目標を、筆者 Vellucci は次の2点に整理要約する:
・それぞれの目的に応じた「調べ方」を身につけること。
・調べるための手段や道具(ツール)が、本当に信頼に足るものか、その「評価 evaluation」ができるようになること。
たとえば、もしもバッハの作品について調べることになった場合、まずどんなカタログがあるのかを知ることが・、つぎにそのカタログのうちどれが信用できるのか、その識別ができるようになることが・、ということになる。
インターネットに関しても、この2つのポイントが押さえられなくてはならない。しかし、このうちの・に関しては、問題が大きい。インターネットに関するかぎり、伝統的な
Bibliography の世界では存在した「Review Media」が存在しないからである。Bibliography 用ツールとしてのインターネットの一番の問題はそこにある。
■いつインターネットを使うか?
それでは、従来の冊子体のメディアではなく、あえてインターネットを使うことに意味がある場合というのは、いったいどんな場合なのか? あるいは、本当に使いものになるサイトとは何なのか? そうした問いに対する答えはおそらく次の2つに求められるだろう:
(1) 冊子では追いつけない最新の情報の場合:現代作曲家の最近の活動情報、死亡記事;最新の論文情報など。ここでは、随時記事を更新できるというインターネット情報の利点が発揮される。
その意味で、先日の例会のおりに探索したMLAのデータベースは、利用価値が高い。現代作曲家の死亡・追悼記事については「http://www-sul.stanford.edu/depts/music/mla/necrology/welcome.html」が役に立つ。また、学位論文については、Adkinsの目録に代わることを目的に編纂・公開されている「http://www.music.indiana.edu/ddm」が役立つ。後者は、最新データから入力を始め、過去のデータに向かって遡及中:近日中にAdkins
の目録と完全に交代する予定という。
(2) ローカル色の強い特殊情報の場合:
各地の音楽祭情報、単立の特殊テーマによる資料館などの情報も、インターネットのほうが容易に資料・情報を入手できる。
この主のオススメURLは、言うまでもなく、この夏のIAML国際会議のホームページ! さまざまなプログラムが決定するたびに、情報が更新されて公開される。「http://mus.unige.ch/iaml97」でアクセスできる。
上記2タイプの場合は、インターネットが有効に使われる可能性が高い。しかしそれ以外のものについては、従来どおりの「冊子体書誌ツール」のほうが時間の節約になり、信頼度も高いことが多い。冷静に考えてみればそれもよく理解できるのだが、コンピュータの前に座ると、なんでも可能な魔法の箱のような気がして、ついつい冷静な判断を失い、無駄な時間を過ごしてしまいがちである。
■とんでもないHP
先日の例会のおりにも話がでたが、シェーンベルク研究所のHP(http://www-lib.usc.edu/Schoen/asi.htm)や、日本サウンドスケープ協会のHP(http://www.mag.keio.ac.jp/~paya/SAJ/service.html)など、関連参考文献表を公開している所がいくつもあり、学生がレポートを書くさいに、そこから「コピー+ペースト」すれば、レポートの最後の参考文献表の数ページ分があっと言う間にできてしまう。
その話がでたときからイヤな予感がしていたが、その後、もっと「とんでもない」HPをみつけた。それは、アメリカの音楽学生たちの「学期末レポート・リサイクル・センター」なるHP。
1回誰かが書いたレポートを登録しておき、次に同じような課題でレポートを書くことになった別の学生がそれを有料でダウンロードするというもの。「あくまでも参考用にとどめ、そのまま提出してはいけない」と警告が掲げられているが、実際に起こる事態は容易に想像できる。
数年前、ウンベルト・エーコの『論文作法』を読んだとき、次のような一節を読んで爆笑した。
大学を卒業するという嘆かわしい経済的理由から論文作成をせざるを得ないなら、次の2つをすべきである:(1)
誰か他人に論文を作成してもらうために相当額を投資する。(2) 他の大学で数年前に作成された論文をコピーする……カターニャで作成された論文をミラノでコピーすれば、うまくやりおおせるであろう。(ウンベルト・エーコ『論文作法』谷口勇訳、而立書房、1991年、7ページ)
数年前に読んだときには大いに笑った。しかし最近、その笑いがだんだん「ひきつり」に変わりつつある。(フェリス女学院大学助教授)
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オーケストラ・ライブラリアンの仕事 河野純子
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1996年、5月11日〜13日の3日間、アメリカのオハイオ州コロンバスにて第14回北米を中心としたオーケストラ・ライブラリアンの組織
MOLA (Major Orchestra Librarians' Association) の会議に参加することができた。会議の内容は北米における著作権、コンピュータの使用法、また精神面のケアに至るまでさまざまな話し合いが行われた。
まずは、音楽教室のプログラミングについては、子供を相手にしての演奏会のため、かなりの配慮が必要だという意見が多くさまざまな提案が出された。音楽を通しての情操教育、ましてや子供を楽しませなければならない。時間や財政面での制約も多い。この問題をライブラリアンと音楽教室担当のマネージャーとの間で話し合いがよく持たれるようだ。そのためヒューストン響、ボルティモア響その他のオーケストラの音楽教室のプログラムが出席者全員の資料となり、著作権法の違いから日本では想像もできないプログラムがあったりした。また「オーケストラと子供のふれあいを大切にしたい」とボルティモア響のライブラリアンが発表。彼女は、学校やホールで接する音楽だけではなく、子供の多く集まる所へ出かけていくことを提案しているという。「たとえばショッピングモールなどで楽器と音楽にすぐそばで触れてほしい」と言っていた。
ライブラリアンの精神面についての講師はオハイオ州立大学のサミュエル・H.博士。この会議にそなえて博士は MOLA の会員に対しストレスや悩みなどをアンケートした結果を発表してくれた。人間はあらゆる社会生活(政治、経済、文化)において信頼の中で生きているのであって、生きる目的として何ができるか、何をするべきか、自己の発見により自信を持って生きなければならないと話された。仕事での失職、転職にも大きなストレスがたまること。責任感によるストレスは時には社会的な援助も必要であること。そして仕事場が窓のない場所、地下などでの作業は、とくに大きなストレスがたまると話された。また男性と女性とのストレスの比較もされた。結果は男性のほうが圧倒的にストレスが多い。女性は精神面、心理面でのストレスが多い。全体的には、他の職業(会社員など)と比べるとストレスが多く当然の結果であった。この発表後、各オーケストラの女性、男性ライブラリアンの話し合いが行われ、家庭を持つ女性、離婚者、未亡人、とさまざまな人たちが意見を交換しあった。また子供を持つ女性ライブラリアンは大変だと言いながら上手く仕事をこなすコツを皆に披露していた。男性も同じく家庭内での自分、そしてオーケストラでの自分をうまくコントロールしなければならないと語っていた。
3日間を通し北米オーケストラの事情や、問題点を約50名のライブラリアン同士、質問できあえたのも素晴らしい機会であった。私達の職場もコンピュータ社会になりつつあるが、すぐに生かせるソフトができていることも業者の方から宣伝をかねて聞くことができたのは何よりの情報であった。そしてホスト・オーケストラであるコロンバス・シンフォニーの演奏会やディナー・パーティー等さまざまなレセプションを通していろいろなライブラリアンに出会えたのは日常の仕事をいっそう快活にするものであった。議長のシンシナティー響のマリーが「来年も必ず来てね。絶対よ」という言葉を最後にコロンバスをたった。3日間を通じて印象深い会議であった。(関西フィルハーモニー管弦楽団ライブラリアン)
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会計報告 TREASURER'S REPORT
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■借入れ金返済を完了しました。
長期間に渡りお借りしていた村井範子氏への全額返済を、昨年11月22日無事完了しました。
■1996年度決算状況
上述の借入れ金返済、ニューズレターの発行、各関係団体会費、通信費、例会費用などが主たる支出でした。
全体としては、順調に前向きの活動に会わせた予算を考えられる時期に到達したと考えています。細部は5月に予定されている総会でご報告を致します。
■1997年度予算案に向けて
大会派遣費の増額、例会や、今後の活動費用の見通しが課題になると考えています。総会での提案を含め検討中です。ご意見をお寄せ下さい。
■会費納入は順調です
1996年度の活動が反映してか、一昨年に比べ、出足好調でした。ほぼ全員の入金を確認しましたが、なお督促を受けた方はお急ぎ下さい!
会計に関するお問い合わせは藤堂へ直接お願いします。
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事 務 局 よ り
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■規約改正へ向けて
IAML日本支部は、これまで「個人会員」と「団体会員」の2種の会員で構成されてきましたが、今回新しく「名誉会員」を加えたい、という提案がありました。この提案を受けて、「規約の改正」案をみなさまにおはかり致します。ご検討ください。
■支部役員の選挙について
選挙委員会では、2月28日まで候補者推薦を受け付けています。「この人に次期の役員をお願いしたい」という案のある方は、下記までご連絡下さい:
〒106 港区麻布台1−8−14
日本近代音楽館 気付
IAML日本支部選挙委員会
■今年度の支部総会は5月31日
1997年度のIAML日本支部総会は、5月31日(土曜日)の午後に行われます。詳細はおって通知いたします。
■ジュネーヴ会議で長谷川由美子氏が発表予定
今年の夏のIAML国際会議(ジュネーヴ)の、RIdIMの分科会で、国立音楽大学附属図書館の長谷川由美子氏が発表を予定しています。
■事務局への連絡は郵便かFAXで
IAMLは、日本近代音楽館のご好意により同館に事務局をおいていますが、現在、同館職員のなかにIAML事務局のスタッフがおりません。ご好意で、郵便物等を転送していただいているのが現状です。したがって、事務局への連絡は、電話を避け、できるだけ書面でお願いします。緊急の場合は、事務局長の自宅でも連絡をお受けいたします。
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会 員 異
動
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・ 会員名義変更
変更前:愛知県立芸術大学 音楽学部 音楽学
研究室(井上さつき・楢崎洋子)
変更後:愛知県立芸術大学 附属図書館
・ 退 会
市川利次、古荘隆保
[住所の変更などありましたら、日本支部の事務局まで、ご連絡ください。本部からの郵便物の宛名に誤植がある場合なども、日本支部の事務局あてご一報ください。日本支部事務局が窓口となって、本部へ連絡します。]
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PUBLICATIONS RECEIVED
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*上野学園日本音楽資料室研究年報『日本音楽資料研究』第1号(上野学園日本音楽資料室より)
*『音楽文献目録 24』(音楽文献目録委員会より)
[寄贈いただいた上記資料は、日本近代音楽館内のIAML日本支部のロッカーに保管されています。]
(以上)